一般的なバイアグラとは?
スティーブ・ワグナ-は、「すばらしいメンバーですね。
これを見てほっとしました。
私自身、ファニー・ファンドの投資戦略自体に誤りがあったとは考えていませんでした。
このようにきちんとした執行体制が整えば、きっとファンドの復興はできるでしょう」と希望的観測を述べた。
「私が今回ニューヨークに出張に来ているのは、パート・タウンゼントとブルース・ミッチェルとの会議のためです。
そのうちにあなたにもご紹介しますが、ふたりとも確かな人物です。
彼らふたりが中心となって、ファンドの資産内容の実情、査定、今後の見通しについて、今報告書をとりまとめています。
この報告書はあなたにもお送りしますので、ぜひ投資家への連絡をお願いします」とデユ・クラピエは言った。
そして、「パート・タウンゼントの一族は、国務長官を始め、アメリカ政府にも多くの重要人物を輩出しています。
彼は、ファニー・ファンドの件については、名の通ったヨーロッパのプライベート・パンク五行も巻き込んでいるので、このままでは欧米関係にもよくないと大変心配しています」と続けた。
さらに、「現取締役会の退陣と新規取締役会の任命を行う手続きとして、正式に株主の投票を行うことになります。
あなたが紹介されたアジアの投資家からの資金額は、総投票数の八%近くに相当します。
今のところヨーロッパの投資家側で五五%の票数は固めていますが、念のため、われわれの方にはあなたからまとめてくれる票数が必要です。
ブリユツセルに戻りましたら委任状を送りますので、これを投資家の皆さんに配布して票をとりまとめていただけますか」と続けた。
「もちろんです。
何でもご協力いたします」とスティーブは答えた。
ふたりはともにルテスを後にした。
このランチが、スティーブがルテスに通った最後の機会になった。
ニ〇〇四年二月一四日のバレンタインデーを最後に、三〇年以上続いたルテスは、そのレストランを店じまいすることになったからだ穏健なヨーロッパの投資家二〇〇四年三月に入り、スティーブ・ワグナーは、リュック・デュ・クラピエから現状報告のEメールを受け取った。
これを自分の関係する投資家に配送した。
それから数日後、今度は、ファニー・ファンド運用会社からも報告書が届いた。
運用会社からの報告は「資産の現状について」と題し、投資案件の個別不動産の融資契約の変更などについて細かく記述されていた。
スティーブが気になったのは次の二点、だった。
まず、「家賃保険」に関して、昨年二〇〇三年五月にニューヨーク州保険局に保証商品として承認されたはずだったが、二〇〇四年三月五日に、保険当局と保証商品の発行体であるA保険会社が交渉の末、別途、住居用価値保険商品として新たに見直すことに合意したという報告だった。
当初この案件が始められた際に取り決められたパミューダの保険会社を含めた計画は、すでに別の形に変わっており、しかも保険当局との折衝が難航するなど、事業計画の見通しの甘さが露呈していた。
次に、「目下、ファニー・ファンドが支払った手数料・諸費用について、独立の立場からの会社が調査を開始しています。
調査会社の弁護士を通して、会計監査疑惑に関する厳格な財務調査で有名なコンサルティング会社が入り、あらゆる資料を精査しています」というくだりがあった。
この表現は一見、正当性をもって投資家に自らの姿勢を訴えているようにみえる。
しかし、デユ・クラピエから送ってもらった、タウンゼントとその右腕のミッチェルがまとめた報告書「ファニー・ファンド事業見直し」と比較すると、何が起こっているかは明らかだった。
ふたりがまとめた事業見直し計画の要点は以下のようである。
「資産価値については、二〇〇二年末までファニー・ファンド経営陣がファンドの資産価値を過大評価していた事実が認められる。
長い裁判や裁判所管理は避けなければならないが、交渉を通じた公正な解決は必要と思われる。
今後の戦略については、現取締役員に対する訴訟は、詐欺、横領の事実が判然としない限り、考えない。
現在ファンドの現金保有高などに関して精査を行っており、結果は数週間で判明する。
なお、監査法人EDO社を訴えることも時間とコストがかかる面倒な手続きで、裁判中は一切の経営活動を中止せねばならない可能性もあり、投資家にとっては通常の資産売却手続きや再投資をするより投資金額取り戻しにかえって不利になることが考えられる。
ポートフォリオの再構築については、二種類の方法が選択肢として考えられる(ただし、折衷案も考えられる)。
第一案は、所持物件をなるべく早く売却する。
ただし、価値再生の途中での売却となるので売却価格は低くなる。
しかし、この方法をとれば、二年後に投資家に投資代金の一部返還を開始、四年後に(大幅な損失は出るが)完了できる。
第二案は、投資資金の一〇〇%回収を目的とするもので、資金をキャッシュフローがプラスになるアメリカの商業用不動産物件に借入金を絞って再投資し、七1一〇年で当初投資資金の一〇〇%回収を投資家にもたらすものである。
この案の採用には投資家の賛同が必要で、かっ、投資資金の有効活用のために再投資ファンドには新規投資家からの資金も募集することになろう。
その場合のファンドの運用規模は一〇億ドル程度が適当と思われる。
投資資金に対する年間平均リターンは七・五1一〇%を想定している。
ヨーロッパの投資家連合は、第一案には賛同したが、これは少なくとも今後二年間は投資資金返還が起きなくてもよい、という立場である。
第二案に賛同する者もいるだろうが、もっと短期に資金が必要な投資家もおり、その場合長期投資家が資金の必要な投資家の株式を一定条件で買い取ることも考えられよう。
現時点の運用会社の従業員の数を減らすなど、コストカットをさらに進める必要がある。
現経営陣は、目先の資産価値(これによって今までの運用手数料が決まっていた)にこだわりすぎキャッシュフローの重要性を看過していた。
今後、将来性のある不動産案件と「家賃保険」案件を発展させる能力はほとんどないと見込まれる」。
デユ・クラピエがまとめたパート・タウンゼントらの見通しと運用会社側との認識の差が明らかだった。
この格差は何を意味するのか。
四月に入ると、あの温厚なデュ・クラピエが怒りを露わにしたEメールをよこした。
もっとも、教養の高い彼の怒りは、アメリカ人のようにFやBで始まる言葉で怒鳴るのとは赴きが異なり、格調高いラテン語で表現されていた。
スティーブは、哲学者キケロの有名な言葉の引用で始まるデュ・クラピエのメールを読み始めるのに、古びたラテン語辞典をひっくり返さなければならなかった。
( カティリーナよ、われわれの忍耐強さをいつまで弄ぶ気でいるのか)ローマ元老院でのキケロの演説はこの一節から始まる。
カティリーナとは、元老院でキケロを暗殺しようとした人物だ。
カティリーナが長々と無意味な演説を続けるなか、キケロは立ち上がり、彼の演説をさえぎると、全員の前でカティリーナの暗殺計画を暴くのである。
どうやら、あらゆる投資家を目の前に、虚偽と不正の限りを尽くしたポール・シェーカー社長とダーク・ヴァン・ベルグが最後の悪あがきをしている様子がうかがえた。
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